条件付きプロンプトは、原文が特定の条件に一致するときだけ、サイト固有の翻訳ルールを翻訳エンジン(LLM)への指示として差し込む機能です。
通常の「カスタムプロンプト」が対象言語のすべての翻訳に常時効くのに対し、条件付きプロンプトはトリガーに一致した場合のみ追加されます。

条件付き辞書との違い
条件付き辞書は、マッチした原文を指定したテキストへ「置換」する機能です。
条件付きプロンプトは、置換は行わず、翻訳エンジンに対する「指示」をその場で追加します。訳文そのものはエンジンが生成します。
機能 | 動作 | 翻訳APIへの送信 |
条件付き辞書 | マッチした原文を訳文に置換 | 置換後の文は送信しない |
条件付きプロンプト | プロンプトに指示を差し込む | 送信する(プロンプト付きで翻訳) |
ユースケース
- 特定の固有名詞が出てきたときだけ、訳し方の方針を細かく指示したい
- 特定のフレーズを含む文では敬体/常体を切り替えたい
- 商品スペックのような定型表現があるときだけ、特殊な訳語ルールを適用したい
- 特定のパターン(型番、日付表記など)が含まれる文で、訳文側の表記ルールを守らせたい
設定できる条件
条件付きプロンプトでは、以下の項目を設定します。
項目 | 必須 | 説明 |
ラベル | − | 管理用の名称。翻訳結果には影響しません |
翻訳先言語 | ○ | このプロンプトを適用する対象言語 |
トリガー種別 | ○ | contains(部分一致)または regex(正規表現) |
トリガー値 | ○ | トリガー判定に使う文字列または正規表現 |
プロンプト本文 | ○ | 翻訳エンジンに差し込む指示文 |
有効/無効 | − | 一時的にルールをオフにしたいときに使用 |
トリガー種別
- contains: 原文に「トリガー値」の文字列がそのまま含まれている場合にマッチします。大文字小文字は区別されます。
- regex: 原文が「トリガー値」を正規表現として評価した結果にマッチする場合に発火します。コンパイルできない正規表現は無効として扱われ、そのルールはスキップされます。
判定ロジック
- 判定は「翻訳先言語」が一致するルールに対してのみ行われます。
- その翻訳バッチで実際にエンジンへ送られる原文のうち、1件でもトリガーに一致するものがあれば、そのルールのプロンプト本文が差し込み対象になります。
- 1つのリクエスト内で複数のルールが同時にマッチした場合、すべてのプロンプト本文が登録順に連結されて差し込まれます。
- まったく同じプロンプト本文が複数のルールで指定されていた場合は、重複を除き最初の1件のみ採用されます。
有効/無効がオフのルールは評価されません。
プロンプト本文の長さの上限
連結された条件付きプロンプトの合計文字数には上限(8000文字)があります。
合計長が上限を超える場合は、登録順で先頭から詰めていき、上限に達した時点で以降のルールは打ち切られます。
補足
- 条件付きプロンプトは、その時点で「新しく LLM へ翻訳依頼するテキスト」を対象に評価されます。すでに翻訳メモリに乗っているテキストには影響しません。
- ルールを変更しても、過去にキャッシュされた訳文は自動では更新されません。新規翻訳が発生したタイミングから反映されます。
実際のご利用における具体例
実際の運用イメージとして、いくつかのパターンを示します。
プロンプト本文はそのまま LLM への指示になるので、「〜してください」のように明確な命令形で書くと安定します。
訳語を例示する形(A ではなく B)で書くと、より意図が伝わりやすくなります。
例1: 自社メディアサイトで「山登り」を hiking 系で訳したい
自社がハイキング情報を扱うメディアのため、「山登り」「登山」を
climb ではなく hike / hiking 系で訳したい場合。項目 | 値 |
翻訳先言語 | en |
トリガー種別 | contains |
トリガー値 | 山登り |
プロンプト本文 | 「山登り」「登山」「山歩き」などのアウトドア用語は、 climb / climbing ではなく hike / hiking 系の語で訳してください。文脈に合わせて自然な活用形(hiking, to hike, hikes など)を選んでください。技術的なロッククライミングの文脈である場合のみ climbing を使ってください。 |
「登山」も拾いたい場合は、同じ翻訳先言語でもう1ルール
トリガー値: 登山 を追加します。
(トリガー値はルールごとに1つだけ指定できます)例2: ホテルサイトで「お客様」を guest として訳したい
「お客様」を
customer ではなく guest として、宿泊客への敬意を込めたトーンに揃えたい場合。項目 | 値 |
翻訳先言語 | en |
トリガー種別 | contains |
トリガー値 | お客様 |
プロンプト本文 | このサイトはホテルの公式サイトです。「お客様」は customer ではなく guest と訳してください。また、文章全体は宿泊客への歓迎と敬意が伝わる、温かみのあるフォーマルな語り口にしてください。「いらっしゃいませ」「お迎えする」のような表現は、welcome を中心に自然な英語表現で訳してください。 |
例3: 中国語でフォーマルな二人称(您)に統一したい
中国語訳のとき、企業サイトとして読み手を尊重するトーンを徹底したい場合。
項目 | 値 |
翻訳先言語 | zh-CN |
トリガー種別 | contains |
トリガー値 | お客様 |
プロンプト本文 | このサイトは企業の公式サイトです。読み手を指す二人称はすべて 您 を使用し、你 は使わないでください。文章全体のトーンも丁寧で落ち着いた書き言葉(書面語)に揃えてください。 |
例4: 製品ページで型番をそのまま残したい
「XR-1200」「ABC-50」のような型番が英訳されたり、表記が変化したりするのを防ぎたい場合。
正規表現で型番のパターンを検出します。
項目 | 値 |
翻訳先言語 | en |
トリガー種別 | regex |
トリガー値 | [A-Z]{2,}-\\d{2,} |
プロンプト本文 | 原文中の型番(例: XR-1200, ABC-50 のように、アルファベット大文字数文字とハイフンと数字の組み合わせ)は、訳語を補わず原文の表記をそのまま英訳文中にも維持してください。スペースや記号の有無も変えないでください。 |
例5: 「※」で始まる注意書きを Note: で始めたい
注釈マーク
※ を英語圏向けに自然な形へ整えたい場合。項目 | 値 |
翻訳先言語 | en |
トリガー種別 | contains |
トリガー値 | ※ |
プロンプト本文 | 原文の「※」で始まる文は注意書きです。英訳では「※」の代わりに Note: を文頭に置き、後ろに半角スペースを入れて訳文を続けてください。複数の「※」がある場合はすべて同じ形式で揃えてください。 |
例6: 医療系で効能を断定しない言い回しにしたい
健康食品やクリニック系のサイトで、薬機法・各国の表現規制に配慮した翻訳をしたい場合。
項目 | 値 |
翻訳先言語 | en |
トリガー種別 | contains |
トリガー値 | 効く |
プロンプト本文 | 効能・効果を断定する表現は避けてください。「効く」「効果がある」などは cure / treat のような断定的な動詞ではなく、may help with、is intended to support、be effective for のように効果を保証しないニュアンスで訳してください。 |
プロンプト本文を書くときのコツ
- 命令形(「〜してください」「〜しないでください」)で書くと指示として安定します
- 「A ではなく B」のように、避けたい訳語と望ましい訳語をセットで示すと精度が上がります
- 1つのプロンプトで複数のルールを詰め込みすぎず、目的が異なるなら別ルールに分けたほうが管理しやすくなります
- 「文脈によっては例外を認める」と書いておくと、機械的な置換とは違う柔軟さが活きます(例: ロッククライミングの文脈のみ
climbingを許可)